<コラム>移送と回付

移送と回付

1 別の裁判所で事件を審理してほしい                                  

 遠方の◎◎地方裁判所から出頭の呼出し状がきたが、近くの那覇地方裁判所で審理してほしい。遠方の那覇地方裁判所△△支部から呼出し状がきたが、那覇地方裁判所本庁で審理してほしい。

これらの場合、当事者はどういう手続きをとることができるでしょうか。実は、前者と後者は、似たような状況でありながら、とりうる手続きは大きく異なります。

 

2 移送とは

 裁判所が訴訟を他の管轄裁判所に移転することを移送といいます。移送には、管轄権のない裁判所から管轄権のある裁判所に移送する必要的移送(民事訴訟法16条1項、19条1項、19条2項、274条など)と管轄権のある裁判所から管轄権のない裁判所に移送する裁量移送(法17条、18条)があります。移送については、当事者に申立権があります。ですから、遠方の◎◎地方裁判所から呼び出しがきたが、

那覇地方裁判所で審理してほしい場合は、当事者は、期日において、または理由を明らかにした書面を提出して(民事訴訟規則7条)申し立てることができます。裁判所の移送の決定、あるいは移送申立てを却下した決定に対しては、当事者は即時抗告をすることができます。(法21条)

 

3 管轄とは

 訴訟の手続をどの裁判所で行うかの分担を「管轄」といいます。管轄は、「下級裁判所の設立及び管轄区域に 関する法律」により定められています。同法には、裁判所単位で管轄区域が定められています。

 一方、地方裁判所に設置されている支部は、司法行政権を与えられているものではなく、それ自体司法行政官庁としての裁判所(本庁)に包摂されるものであるとともに、裁判権の面においても、地方裁判所の一部として当該地方裁判所の有する裁判権を行使するにすぎず、支部固有の裁判権を有するものではありません。したがって、支部の担当範囲は、地方裁判所内部の事務分配の基準にすぎず、法律上の「管轄」には、当たらないことになります。(最判昭和44年3月25日)

 

4 回付について

 同一裁判所内の本庁や支部の担当範囲については、「管轄」でない以上、同一裁判所における本庁・支部間、あるいは支部相互間での訴訟の配転は、「移送」にはあたりません。これは「回付」といいます。回付には、当事者に申立権がありません。したがって、当事者が、回付を求めたいときには、裁判所に対し、職権発動を求めることになります。実務上は、回付を求める上申書を裁判所に提出することが多いようです。また、回付に対しては、当事者には不服申立権はありません。(最判昭和44年3月25日)

Follow me!