1 立ち退き交渉以前の準備

・家賃が低廉な場合は、話し合いで相場にあげておく(立退料対策)

・家賃滞納、目的外利用などがあれば事細かに記録。内容証明で通知。

・新しい借家人については、定期借家→手続きが面倒なので、依頼は司法書士・弁護士へ。

(当事務所でも定期借家の賃貸借契約書の作成を公正証書作成も含めて10万円で行っています。)

※立ち退き交渉の心得、コツについてもご参照ください。

2 通知書で事前連絡 

・連絡文書で早めに、建て替えを考えていることを連絡(更新拒絶期間前でも可)

・これまで利用してもらったことに対する感謝

・立退きについて時期や具体的な方法について話をしたい事

・再入居が可能な場合の明示

・最初から立退料の提示は必ずしも必要ではない。→予算は有限。

・こちらの建て替えの必要性を分かってもらう文書にする。

 →ただし儲かっている風に思われることは絶対ダメ。

・賃借人に対しても、老朽化物件であれば危険性、再入居可であればメリットを記載。

・交渉経緯は全て、記録する事。

 

3 直接の話し合い

・賃借人の世帯の決定権を持つキーパーソンを探る。

・賃借人の事情をよく把握する。

   ①転貸先

   ②家賃⇒低廉な家賃で長い間賃貸させている場合は危険

   ③引っ越し費用(沖縄ではこれが重要)

   ④転貸までの時間

   ⑤テナントの場合は、顧客離れの危険も

 

4 ニーズを把握した上での立退料の提案

① 立退料は必須ではない、、が

実際問題として、立退料がないと賃借人は引っ越し代などがないと出て行けない事があります。

明け渡し請求については、例えばテナントさんに用法違反があるとか、賃料の未払いがある場合、自己使用の目的がとても切実な場合などには、立退料を支払う必要がないという判決が出ることもあります。つまり、立退料は必ず払わなければいけないというものではありません。 

とはいえ、立退料が必須ではない、相手方の使用方法に非がある、と言っても、実際には払ってしまったほうが早期に賃借人を追い出し、代わりに優良な賃借人を入れる可能性が高まります。また、賃借人としても、引っ越し代がなければ実際には出ていけないという話があります。

⇒裁判になった時の相場を知る。明け渡しの正当事由により差があります。

 

② 交渉で徐々に金額を上げるのがコツ。

③ 合わせて、期間内の更新拒絶の通知書を「内容証明」で発送。

 

5 明け渡し交渉に応じない場合・・・

明け渡しの交渉を重ねても賃借人が明け渡しを拒むときはあります。その際には、弁護士を間に挟み交渉(長くても1~2か月)し、または即、裁判にすることをお勧めします。その際に考慮すべきことは下記のような点です。

①立退料の相場は明確ではない。

 立退料の算定方法は、引っ越し費用などの実費のほかにのれん代、営業損失などが含まれ、これらは一義的に決まるものではありません。また、立ち退きの正当事由の内容などによっても立退料の代金は変わります。

②裁判所には、明け渡しまでの経緯、使用目的の正当性をアピール。

立ち退きの正当事由の判断は様々な要素が絡んできます。その中で、裁判所が判断の基礎とする事情がありますので、弁護士とよく話をしたうえで、かかる判断基準に沿って自身の使用目的の正当性や明け渡しの必要性、明け渡しまでの交渉の経緯などをしっかり主張する必要があります。

③迅速に動く利益に敏感な弁護士に交渉を依頼すること。

実は立ち退き交渉で往々にあることですが、双方が感情的になって交渉が決裂する事があります。しかし、戦略的な観点から俯瞰すれば、実際には早期に立退料を払い問題のあるテナント・店子には退出してもらい、新たな物件を立ち上げたほうが、はるかに経済的であり、かつオーナー自身の精神的な損失も少なく済むことがあります。このあたりの時間と利益に敏感な弁護士に建物明け渡しの交渉を依頼すべきです。

 

6 明け渡し合意書 

ついに、明け渡し交渉が合意に至った場合には、かならず書面で「合意内容」を決めておく必要があります。具多的には以下のような内容を定める必要があります。

① 明け渡し時期

そもそも明け渡し時期を明確にしておかないと、その後の賃料相当損害金や残置物の処理などにおいても非常に苦労します。なお、賃借人が出ていく準備が出来ないとどうしようもないので、和解から2か月程度は余裕を見て定めることが多いです。

② 立退料の支払い→合意時点で半額支払い、明け渡し後に残額。

合意の時点で半額を支払い、明け渡し後に残額を支払う形態にするのは、まず先立つものがないと賃借人も出ていけないという実情があるので、立退料をある程度持たせたうえで、明け渡しを完了することへのインセンティブを与えるという面と明け渡しが長引いた時の家賃をしっかり回収するという観点から、残額(明け渡しが長引いた場合にはその分の賃料を差し引く)を明け渡し後に支払うという仕組みにしておくものです。

③ 明け渡し義務履行遅滞後の賃料相当損害金の定め

明け渡しが長引いた時のこちらの賃料損害を補償するために必ず入れることをお勧めします。

④ 残置物処分の同意

賃借人が出て行った後に、処分してよいのかわからないような私物が残されていることは往々にしてあります。そこでかかる残置物が残っていた場合に、これを大家さんが処分してもよいという事にあらかじめ同意を得ておきます。